【不動産コラム】日本の住宅の寿命は世界の住宅と比べると減失スピードが早い?

取り壊された住宅の経過年数

しばしば指摘されるように日本の住宅の寿命は短い。国土交通省の推計による滅失住宅(除却された住宅H取り壊された住宅など)の平均築後経過年数は30年と、アメリカやイギリスに比べかなり見劣りする。

また、日本で現存する住宅ストックの建築時期を見ると、1981年以降に建築された住宅が6割を占め、日年以前の住宅が5%程度にすぎないのに対し、アメリカでは日年以前の住宅が51%、イギリスでは45%を占めている(国土交通省調べ)。

これは日本の住宅が短期間で建て替えられてきたことを示している。しかし、それでも日本の住宅寿命はかつて24年であったのに比べれば長くなっている。そもそも、日本の住宅寿命は昔から短かったわけではない。前述のように、今でも地方の古民家などでは、築100年に達するものも珍しくない。

日本の住宅寿命が短くなったのは戦後のことで、この間の住宅建築に問題があったことを示している。このように、日本の住宅寿命が短いことは、滅失住宅の平均築後経過年数の各国との比較で、通常議論されている。

現存している住宅も含めた平均寿命

あくまでも取り壊された住宅についての築後経過年数の平均であり、取り壊されることなく長く使われている住宅も含めた平均寿命ではない。その意味で、実感とは合わないという批判はこのデlタにはある。

それでは、現存している住宅も含めた住宅の平均寿命はどの程度だろうか。これはある時点で建築された住宅が、時間の経過とともにどのように滅失してきたかのパターン(滅失パターン)から推測できる。

総務省「住宅・土地統計調査」のデータに基づき、各年代(50~80年代)に建てられた住宅が、時間の経過とともにどのように減少したかについて示したのが(築年数が3~12年のものを100とした場合の経過年数ごとの残存率を算出)。「住宅・土地統計調査」は5年ごとの調査であり、建築年代ごとのごく粗い滅失パターンしか示せない上、全件を調べる悉皆調査ではない(サンプル調査を基に全体の数を推計する)というデータ上の難点はあるものの、滅失パターンのおおまかな傾向は知ることができる。

実は、この滅失パターンのグラフで、残存率が50%となる時点が住宅の平均寿命と解釈できる(寿命の分布が正規分布していると仮定した場合)。このグラフからわかる寿命は、取り壊されることなく、現存している住宅も含めた平均寿命であり(住宅ストック全体の寿命)、国土交通省推計の寿命とは異なる意味を持つ。より実感に近い寿命という意味では、こちらのほうが適切かもしれない。

50年代に建築された住宅について見ると、築後33年程度(28~37年)で残存率は50%となり、築後必年程度(43~52年)で25%となっている。これは、かつての住宅はおよそ初年で半分が取り壊され、印年で4分の1しか残らない状況であったことを示している。これは回年代に建築された住宅ストック全体の平均寿命がお年程度であることを意味する。

年代別の住宅の滅失パターンを見ると、50年代から60年代にかけて滅失スピードはやや速くなったが、70年代以降は、滅失スピードは遅くなる傾向が見られた。時代を追うごとに、住宅の使われる年数が増していることを示している。70年代以降に建築された住宅については、残存率が50%になる時点はまだわからないが、グラフに示された滅失パターンの傾きが今後も続くと仮定すると、80年代に建築された住宅ストック全体の平均寿命については50年程度となってもおかしくない。

滅失パターンをさらに詳しく見ると、地域別では、全国に比べ、東京の滅失スピードが速くなっている。また、住宅の形態(一戸建て、共同住宅)別では、共同住宅の滅失スピードが速くなっている。

ただし、地域別、形態別の格差は最近になるほど縮小傾向にある。

滅失スピードが速かった要因住宅

の滅失スピードが速いということは、建物が使用される期間が短く、建てられでもすぐに解体されてしまうということを意味する。

この滅失スピードが最近になるほど遅くなっているということは、建物の耐久年数が以前に比べ増したため使用年数が長くなっているか、もしくは、耐久年数は変わらないものの以前に比べ使用する年数が増しているかのいずれかの現象が起こっていることを意味する。

日本の住宅は、終戦直後は絶対的な住宅不足を解消するため再建が急がれ、高度成長期に入ってからは大都市で急速な人口集中に対応するため、50~60年代に建設が急増した。こ

の過程で、戦前における、棟梁が責任を持って高品質の住宅を建てるという気風が次第に失われていった。大量の住宅を供給するために住宅建設が産業化し、品質よりも数の確保が優先されるようになった。50年代、60年代に建設された住宅が、総じて耐久性に乏しかった背景には、このような事情がある。

また、60年代半ば頃までは、使用される部材(柱の太きや壁の厚さ)の基準が現在と比べ貧弱なものであったため、建て替えざるを得なかったという要因も考えられる。このような事情があった点を考慮すると、70年代以降、徐々に滅失スピードが遅くなっているという点については、住宅が以前に比べ耐周年数が増した結果の反映であると考えるのが自然である。

とりわけ全国平均に比べ、東京の住宅の滅失スピードが速かった。これは東京で建設された住宅が特に耐久性の乏しいものであったことを示している。戦災による住宅の消失と、高度成長期における東京への人口集中によって、東京においては特に住宅建設を急ぐ必要があったことが、耐久性の乏しい住宅が多く建設される要因になったと推察される。

形態別では、二戸建てに比べ共同住宅の滅失スピードが速かったが、これは、住宅を確保するため、劣悪なアパートが東京に大量に建設されたことを反映していると考えられる。

このほか、日本の住宅寿命が短かった要因としては、戦後における住宅関連技術の進歩が著しく、既存の住宅設備を急速に陳腐化させたため、新しい設備を取り入れるためには、リフォームするよりは建て替えたほうが手っ取り早かったという要因がある。

また、ライフスタイルの欧米化が進んでいく中で、古いタイプの建物が敬遠されるようになっていったという点も、住宅寿命の短さに関連していると考えられる。さらには、急速な経済成長によって、より良い住宅を求めるようになっていったという要因もあげることもできるかもしれない。

しかし、最近になるほど滅失スピードは遅くなっており、日本の住宅は、終戦直後や高度成長期に粗製濫造された頃に比べれば、総じて耐久性が向上する方向にあると見ることができる。

80年代以降に建設された住宅は、新耐震基準に対応しており(81年以降に建てられたもの)、最近では新築時における住宅性能表示制度(2000年から開始)の活用や長期優良住宅(09年から開始)も普及しつつあり、一定の基本性能(耐震性、断熱性、防音性、耐久性など)が確保された住宅が増加していることから、今後も滅失スピードは遅くなる傾向が続く可能性が高い。

以前に比べ住宅の耐久性が増していると考えられることは、今後は、中古住宅市場にも良質な物件がより多く登場するようになる可能性が高まっていくことを意味する。これは、当然のことながら、今後の中古市場の成長に寄与することになる。

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